糖尿病とトレーニングについて

こんにちは!トレーナーのSHOです。今回は糖尿病とトレーニングについて紹介していきたいと思います。

  1. 糖尿病とは
  2. 糖尿病の発病ステージとアプローチ
  3. 糖尿病患者のトレーニング計画
  4. トレーニング時の低血糖について
  5. 血糖値上昇を抑えながらトレーニング効果を最大化するために
  6. 食事管理が大変な方(おすすめ商品)
  7. まとめ

糖尿病とは

日本国内において糖尿病患者および糖尿病予備軍の割合はおよそ30%~40%の割合と言われており10人に約4人が血糖値の高い状態に当てはまり、高血圧、脂質異常症と合わせて国民病とも呼ばれるほど疾病率の高い病気になっています。

糖尿病は、血液中の血糖(血中のブドウ糖濃度)が高くなる状態を指す疾患です。通常、私たちの体は食事で摂取した炭水化物を消化・吸収し、ブドウ糖という形でエネルギー源として利用します。このブドウ糖はインスリンというホルモンの働きによって細胞に取り込まれます。

しかし、糖尿病の場合、以下のような理由により血糖値のコントロールがうまく機能せず、高血糖状態が維持されます。

  1. インスリンの不足(1型糖尿病):自己免疫によって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど産生されない状態です。
  2. インスリンの抵抗(2型糖尿病):膵臓がインスリンを産生しているにもかかわらず、体内の細胞が正常にインスリンを利用することができない状態です。

糖尿病にはさまざまな種類がありますが、最も一般的なのは1型糖尿病と2型糖尿病です。他にも妊娠中の一過性の糖尿病(妊娠糖尿病)や、膵臓の疾患や遺伝的な要因による特殊なタイプの糖尿病も存在します。

高血糖が長期間にわたって続くと、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。例えば、心血管疾患、神経障害、腎臓疾患、網膜症、足の潰瘍などが挙げられます。

糖尿病の管理には、適切な食事療法、適度な運動、血糖値のモニタリング、必要に応じた薬物療法が含まれます。また、糖尿病における正しい知識の取得や定期的な健康チェックも重要です。

糖尿病の発病ステージとアプローチ

今回の記事は生活習慣が大きく関わり糖尿病患者の約90%を占める2型糖尿病についてまとめていきます。
糖尿病の発病ステージには、以下のような段階があります。

  1. 比較的健康な状態
    • 症状はなく、血糖値はおおむね正常範囲内です。
    • 血糖値が高めであるがまだ糖尿病と診断されていない状態です。
  2. 糖尿病予備軍
    • 空腹時血糖値や絶食後の血糖値が高めですが、まだ糖尿病の基準値には達していません。
    • インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)や膵臓のインスリン分泌の低下がみられます。
    • 体重管理、適度な運動、食事療法による生活習慣の改善が主な治療計画です。
  3. 糖尿病初期
    • 空腹時血糖値や絶食後の血糖値が基準値以上で、糖尿病と診断されます。
    • 経口降血糖剤やインスリン注射など、血糖値を適正な範囲に保つための薬物療法が導入されることがあります。
    • 適切な食事療法、運動、血糖自己管理、定期的な健康チェックが重要です。
  4. 糖尿病進行期(合併症進行期)
    • 糖尿病の長期間の放置や不適切な管理により、合併症のリスクが高まります。
    • 眼病変(糖尿病網膜症)、腎病変(糖尿病腎症)、神経障害(糖尿病神経障害)などが進行する可能性があります。
    • 厳格な血糖管理、薬物療法の見直し、合併症の早期発見と治療が重要です。

治療計画は進行ステージや個人によって異なりますが、一般的には以下のようなアプローチがあります。

  • 食事療法: 栄養バランスの良い食事、カロリー制限、糖質制限などが行われます。糖尿病教育を受け、血糖値のコントロールを目指します。
  • 運動: 適度な有酸素運動や筋力トレーニングを行います。血糖値のコントロールや体重管理、血圧の改善などを行っていきます。
  • 薬物療法: 経口血糖降下剤やインスリン注射などの薬物が使用されます。血糖値のコントロールや合併症の予防・治療が目的です。
  • 血糖自己管理: 血糖値のモニタリング、自己注射、食事や運動の管理など、日常生活での血糖値のコントロールを行います。
  • 定期的な健康チェック: 医師や専門家の指導のもと、定期的な健康チェック(血液検査、目の検査、腎機能の評価など)が行われます。

重要なのは、早期の糖尿病の発見と適切な治療・管理です。糖尿病の治療は進行状況と個人に合わせた総合的なアプローチが必要であり、医師や専門家の指導のもとで適切な治療計画を作成し、定期的にフォローアップすることが重要です。

糖尿病患者のトレーニング計画

糖尿病および糖尿病予備軍の患者が除脂肪体重の向上と筋肥大を目指しトレーニングを行う場合において、糖尿病と筋トレの関係性、運動時に留意する点、食事内容で留意する点について解説します。

尚、糖尿病初期における知識の少ない状態でのトレーニングは危険が伴うこともあるため、医者や専門家およびトレーナーと連帯しトレーニング計画を実施する必要があります。

1. 糖尿病と筋トレの関係性

糖尿病と筋トレは密接な関係があります。適切なトレーニングは糖尿病の管理に役立ち、除脂肪体重の増加や筋肉の強化によって血糖値の制御が改善されることがあります。筋トレによる筋肉の増加は、身体のインスリンの効果を高め、血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。

まずは、自分自身が糖尿病におけるどのステージにいるのか正しく理解しておく事も重要です。筋トレを行い体重増加を狙いたい場合はカロリーオーバーの状況になるため、低GI値の炭水化物を中心とした複合炭水化物の摂取を心掛け綿密な食事管理を行う事になります。また、増量目的であったとしても健康チェックを行った上でトレーナーとして減量をオススメする場合もあると思います。

個人の目標と目的および現状を踏まえて効果的なトレーニングプログラムを行なっていくことが大切です。以下にあくまでも一例となりますが、大きく2つ目的について主にチェックする項目を記載します。
 
 増量していく場合
  □ 体重管理はできているか (BMI・体脂肪率等から判断)
  □ カロリーオーバー時に自身で血糖値コントロールをする術があるか
  □ 運動に費やす時間を作れるか
  □ 食事の準備(主に低GI食品)
  □ 高強度のレジスタンストレーニングが可能か

 減量していく場合
  □ 低血糖の症状が出た際の対処方法を理解しているか
  □ また過去に低血糖の症状がでた事があるか
  □ 食事制限に取り組むマインドセットができているか
  □ 継続的に運動するモチベーションがあるか

2. 運動時に留意する点

以下の点に留意しながら運動を行うことが重要です。

  • 主治医の指示に従う
    トレーナーはトレーニングプログラムの作成や遂行をサポートする立場のため医療的な指示はできないため、糖尿病や糖尿病予備軍の方は、個別の状態や制約事項に基づいた適切な運動プログラムを作成するためにまずは主治医の指示に従いましょう。
  • 適度な有酸素運動
    有酸素運動は心肺機能を向上させ、脂肪燃焼効果を促進します。ウォーキング、水泳、サイクリングなどの適度な有酸素運動を週に数回行いましょう。
  • レジスタンストレーニング
    筋肉の増加や強化を目指す場合、レジスタンストレーニング(重りや負荷を使用した筋力トレーニング)が有効です。ただし、正しいフォームと適切な負荷を選ぶことが重要です。
  • 血糖値のモニタリング
    運動前、運動中、運動後に血糖値をモニタリングしましょう。運動によって血糖値が急上昇することもあるため、必要に応じて食事やインスリンの調整を行います。

3. 食事内容で留意する点

適切な食事内容も重要です。『糖尿病と診断された人の90%が食事制限を継続できない』*と言われており、カロリー計算や調理面の継続が困難とされています。ボディメイク全般同じですがしっかりと意志を持って継続する事が大事になり、必要に応じて食事制限をサポートしてくれるサービスを利用するのも良いでしょう。(おすすめサービスは後述しています。)

※「メディカルフードサービス㈱より引用」
  • カロリー制限と栄養バランス
    体重管理のためにはカロリー制限が必要ですが、栄養バランスも重視しましょう。食事には適度なタンパク質、食物繊維、良質な脂質、低GI(血糖値上昇の影響が少ない)炭水化物をバランス良く摂るように心がけましょう。
  • 食前の炭水化物摂取
    運動前に炭水化物を摂取することで、エネルギー源となります。しかし、個々の体調や血糖値の状態に合わせて適切な量を摂取するようにしましょう。
  • 適切なタイミングでの摂食
    運動後は筋肉の修復や回復に必要な栄養素を摂取することが重要です。タンパク質を豊富に含むバランスの良い食事や補助的にサプリメントを摂ることで、筋肉の成長を促進しましょう。
※こちらの記事も参考にしてください。

4. パーソナルトレーナーが留意する点

パーソナルトレーナーやコーチに指導を依頼する際には、以下の点に留意することが重要です。

  • 個別の状態に応じたプログラム
    糖尿病や糖尿病予備軍の方の健康状態やトレーニング経験に合わせたプログラムを作成を行っているか。
  • 管理とフィードバック
    トレーニングの進行状況を管理し、血糖値や体調の変動に敏感に対応しているか。適切なフィードバックを行い、トレーニングプログラムの調整や心身のサポートをしているか。
  • モチベーションの維持
    継続的なモチベーションを保つために、短期的目標および中長期的目標を設定し共有・サポートしてくれるか。さらに、トレーニングが楽しくなるような工夫やアクティビティの提案があると素晴らしいです。

トレーニング時の低血糖について

運動中に低血糖が発生すると、以下のような症状が現れることがあります。

  1. 頭痛
  2. 震え
  3. 多汗
  4. 疲労感や虚弱感
  5. 食欲増加
  6. 集中力の低下
  7. ふらつきやめまい
  8. 不安やイライラ
  9. 意識の混濁やろれつの回らなさ
  10. 気分不良や嘔吐

もし運動中にこれらの症状を経験した場合、以下の対策を試してみてください。

  1. 運動前に適切な炭水化物の摂取: 運動前の食事で十分な炭水化物を摂取し、血糖値を安定させます。
  2. 運動中の糖分補給: 長時間の運動や激しい運動を行う場合には、運動中に糖分を摂取することが必要です。糖分を含むスポーツドリンクやゼリー、グルコースの錠剤などを利用します。
  3. 適切なタイミングでの食事: 運動が長時間にわたる場合には、適切なタイミングで軽食(可能であれば食事)を摂取し、血糖値を安定させます。
  4. 運動計画の調整: 運動中の低血糖のリスクが高い場合には、運動の強度や時間を調整することがあります。医師や専門家、トレーナーと相談し、適切なプランを立てましょう。
  5. 血糖値のモニタリング: 運動前や運動中に血糖値を測定し、必要に応じて対策を取ることが重要です。

もし低血糖の症状が出た場合は、運動を一時中断し、ブドウ糖など吸収の早い糖分を摂取します。例えば、ジュースやグルコースの錠剤、キャンディなどが適しています。症状が改善しない場合や意識が混濁している場合には、すぐに医療専門家の助けを求めましょう。

運動中の低血糖を予防するためには、適切な食事と糖分補給、血糖値のモニタリングが重要です。個人の状態や運動計画に応じて、医師や専門家と相談しながら対策を立てることが大切です。

血糖値上昇を抑えながらトレーニング効果を最大化するために

前項で述べたように綿密な食事管理とトレーニングが効果を最大化していくために重要になります。ここでは具体例を挙げながら、特に除脂肪体重の増加を目的にトレーニングを行う方が参考になる方法をご紹介します。

1.消費エネルギーと摂取カロリーの計算
いろんな方法がありますが、下記の表に従い自身が摂取するカロリーおよびPFCバランスを計算します。

1.基礎代謝率(BMR)の計算:

男性の場合:BMR = (10×体重[kg]) + (6.25×身長[cm]) - (5×年齢[歳]) + 5
女性の場合:BMR = (10×体重[kg]) + (6.25×身長[cm]) - (5×年齢[歳]) - 161

2.活動レベルの選択:

ほとんど運動しない(座っていることが多い):BMR × 1.2
軽い運動を週1〜3回行う(軽い運動や散歩など):BMR × 1.375
中程度の運動を週3〜5回行う(ウォーキングやジョギングなど):BMR × 1.55
高い運動レベルで週6〜7回運動する(激しい運動やスポーツを行う):BMR × 1.725
極めて高い運動レベル(非常に厳しいトレーニングを行うアスリートなど):BMR × 1.9

3.消費エネルギーの計算:
活動レベルで得られた値を基礎代謝率(BMR)に乗じることで、一日の消費エネルギーが求められます。
この計算結果は、その方の一日の消費エネルギーの目安となります。ただし、個人の体質や生活習慣によって異なる場合がありますので、参考程度にご利用ください。

4.摂取エネルギーの計算:
上記の計算式より算出された1日の消費エネルギーに+200kcal~400kcalを目安に1日の摂取エネルギーを増やしてみて下さい。(減量したい方は‐+200kcal~400kcal減らす)
炭水化物:全体の50% / たんぱく質:全体の30% / 脂質:全体の20%
の割合で一日の栄養素のバランスを決めていきます。

2.炭水化物について

『炭水化物=糖質+食物繊維』のため、糖尿病および糖尿病予備軍の方は炭水化物の摂取を特に注意し食後血糖値の上昇を抑える必要があるため、1回の食事量を少なくし1日の食事回数を4-6回程度に増やします。(1日の食事量は上記計算で求めた範囲内)また、低GI食品を中心に選ぶ事を心掛けます。
糖類も炭水化物となるため、料理に使う調味料も気を付けたり、ドリンク類に含まれる糖類も気を付けましょう。

3.1日の食事例

糖尿病予備軍の方が筋トレを行う際に血糖値上昇を抑えながら除脂肪体重を向上させるためのバランスの良い日本食の食事メニューの具体的な例を以下に挙げます。炭水化物も適量含まれており、栄養バランスが考慮されています。

朝食: 五穀米と焼き鮭

五穀米(玄米や雑穀をブレンドしたご飯)、焼き鮭と一緒に食べる。梅干しや納豆、漬物などを添えることで、食物繊維や発酵食品を摂取する。

昼食: そばセット

そばセット(ざるそばやかけそば)刻みネギ、わさび、生姜などを添える。サイドに、小鉢やお吸い物、野菜のお浸しを添えることで、バランスの良い食事になる。

間食: バナナ プロテインバー

夕食: 鶏肉の照り焼き丼と味噌汁

鶏肉を照り焼きソースで煮込み、ご飯の上に盛り付ける。彩りとして、細切りの野菜(キャベツ、キュウリ、トマトなど)をトッピングする。味噌汁には、具材としてわかめや豆腐、葱などを入れる。

間食: (就寝前)プロテイン 

これらのメニューでは、炭水化物として五穀米やそば、ご飯を摂取しています。同時に、タンパク質として焼き鮭や鶏肉を含んでおり、筋肉の修復や成長に必要な栄養素を補給します。また、食物繊維や野菜もバランスよく取り入れることで、腸内環境の改善や満腹感の維持に役立ちます。味噌汁や漬物も含めることで、発酵食品からの乳酸菌摂取や塩分の摂り過ぎを防ぐことができます。

ただし、個々の健康状態や食事制限、摂取可能カロリーに応じて、食事内容は調整が必要です。ご自身のライフスタイルに合わせたトレーニングプランと合わせて食事内容についてもトレーナーに相談すると良いでしょう。

食事管理が大変な方(おすすめ商品)

最後に血糖値コントロールを行いながら、食事調整が難しい方にお勧めの商品をご紹介します。

1.トライス(TRICE)
糖質を77%カットした低糖質ライス。
家にある白米や雑穀米と混ぜてコメと同様に使えるため便利な商品です。
減量時に炭水化物を我慢できない方にもおすすめです。

2.メディカルフードサービス
栄養価を徹底管理した健康宅配食専門サービス。
自身で調理するのが大変な方、栄養管理が大変な方に便利なサービスです。
レンジで温めるだけなので手間がかかりません。

3.

4.

まとめ

糖尿病や糖尿病予備軍の方が除脂肪体重の向上と筋肥大を目指してトレーニングを行う際には、医師や専門家の指導のもとで安全かつ効果的なプランを立て、適切な運動と食事を組み合わせることが大切です。個々の状態や制約事項に応じて調整し、継続的なモニタリングを行い、トレーナーのサポートを受けながら、効率的に健康的な体重管理と糖尿病管理をしていきましょう。

糖尿病予備軍および糖尿病患者さんでも、しっかり管理さえできれば、どんな目標でもカラダづくりは可能です!逆に言うと、糖尿病(2型)を治すため運動や食事管理は必須になります。自身の体に向き合いボディメイクしてみませんか?
パーソナルトレーニングのご相談もお待ちしております!


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